過去と未来の間で 2013 5 19

 あれは、イラク戦争が始まった時のことです。
開戦の際に、ホワイトハウスで緊急記者会見が開かれました。
 日本時間では深夜でしたが、
ラムズフェルド国防長官が質問に答えている様子を覚えています。
 私の記憶が確かならば、
アメリカ人の記者が、このような質問をしていたと思います。
「イギリスに前方展開しているB52爆撃機が、
イラクへ向かって飛び立ったという情報がありますが、
東京大空襲のように、また市民を犠牲にするのですか」
 これに対して、国防長官は、
「とんでもない。そんなことはない」と強く否定しました。
 イラク戦争が始まったことで、
世界中が騒然とする中で、
いきなり東京大空襲の話が出てきたので、
私は、ビックリしてしまいました。
 「まだ、アメリカは、東京大空襲のことを気にしていたのか。
あれは、もう60年も前の話である」
 東京大空襲のことを気にしている日本人は、
もう、いないと思います。
それどころか、東京大空襲を知らない日本人の方が多いと思います。
 東京大空襲とは、第二次世界大戦の末期に、
アメリカ軍のB29爆撃機によって行われた空襲で、
数十万人の市民が犠牲になりました。
 戦後、日本人は、東京大空襲のことで、
アメリカを恨むことなく、
アメリカから高度な技術を学び、
焼け野原から、世界第二位の経済大国まで復興したのです。
 敗戦の焼け野原の中で、
多くの日本人は、「恨み心で恨みは解けない」と考え、
むしろアメリカから技術を学んで、復興すると誓ったのです。
 多くの人にとって重要なのは、歴史家になるのではなく、
未来をどうするかを考えることです。
 もちろん、日本にとって、幸運だったのは、
戦後、大成功を収めたからこそ、
東京大空襲のことを忘れてしまったのかもしれません。
もし、失敗者だったら、いまだに東京大空襲を恨んでいたかもしれません。
 しかし、未来の扉は、未来を考える者にしか開きません。
私の目は、未来の扉を見ています。
21世紀の後半になると、今と全く違う世界になっているでしょう。



































































スマートフォンのトップページへ